拓殖の先達に訊くvol.09
政府の活動を経済学の視点から分析する財政学
ー白石教授のご専門である財政学、応用経済学は、それぞれどのような学問なのでしょうか。
財政学は、政府の活動を経済学の視点から分析する学問です。現代社会では、政府の役割が非常に大きくなっており、財政学が扱うテーマは多岐にわたります。具体的には、国と地方の関係、歳入と歳出、公共サービスや社会保障などの分野が含まれます。研究方法もさまざまで、過去の制度や政策、その歴史を分析したり、統計データを使って現状を分析したりします。いずれにせよ、政府の活動をさらに良くするための理念や方法を探る学問であり、多くの財政学者が研究にいそしんでいます。
私自身、財政学は学部時代に授業で習っただけでしたが、社会人になってから本格的に勉強しました。大学卒業後に入社したシンクタンク・三菱総合研究所では、配属先の顧客が政府で、25年間の勤務を通して地方財政、公共事業、租税、社会保障について深く学ぶことができました。実際の政策現場に立ち会えたことは、得難い経験になったと思います。途中、イギリスの大学院に留学したことは、自身の学術レベルの引き上げに役立ちました。
経済学は、「理論」と「応用」という2つの側面を持っています。
理論経済学は経済の仕組みや法則を研究する学問、応用経済学は、理論を現実の問題解決に役立てる学問で、財政、金融、国際経済などが挙げられます。財政学は、経済学の中でも応用的な分野に位置づけられます。財政学の研究者は、「理論研究に専念する」「データ分析などを通じて現実の経済政策に関わる」などそのスタイルはさまざまですが、私の場合はデータを扱っているため、必然的に応用経済学が専門分野ということになります。
財政学は、政府の活動を経済学の視点から分析する学問です。現代社会では、政府の役割が非常に大きくなっており、財政学が扱うテーマは多岐にわたります。具体的には、国と地方の関係、歳入と歳出、公共サービスや社会保障などの分野が含まれます。研究方法もさまざまで、過去の制度や政策、その歴史を分析したり、統計データを使って現状を分析したりします。いずれにせよ、政府の活動をさらに良くするための理念や方法を探る学問であり、多くの財政学者が研究にいそしんでいます。
私自身、財政学は学部時代に授業で習っただけでしたが、社会人になってから本格的に勉強しました。大学卒業後に入社したシンクタンク・三菱総合研究所では、配属先の顧客が政府で、25年間の勤務を通して地方財政、公共事業、租税、社会保障について深く学ぶことができました。実際の政策現場に立ち会えたことは、得難い経験になったと思います。途中、イギリスの大学院に留学したことは、自身の学術レベルの引き上げに役立ちました。
経済学は、「理論」と「応用」という2つの側面を持っています。
理論経済学は経済の仕組みや法則を研究する学問、応用経済学は、理論を現実の問題解決に役立てる学問で、財政、金融、国際経済などが挙げられます。財政学は、経済学の中でも応用的な分野に位置づけられます。財政学の研究者は、「理論研究に専念する」「データ分析などを通じて現実の経済政策に関わる」などそのスタイルはさまざまですが、私の場合はデータを扱っているため、必然的に応用経済学が専門分野ということになります。
ー白石教授の研究内容について教えてください。
消費税の転嫁問題について研究しています。日本では、消費税は簡単な税金と思われがちなことに加え、税金の「使われ方」に注目が集まりがちです。そのため、税金の「集め方」や「経済への影響」を研究する分野はあまり注目されていません。しかし、ヨーロッパではこの分野の研究が盛んです。
現在、日本の消費税率は10%と法律で定められていますが、長引く経済低迷のなか、企業は本当に消費税の上乗せに成功しているのでしょうか? また、高い消費税率が消費者に悪い影響を与えてはいないでしょうか?
私は、さまざまなデータを使って消費税が経済に与える影響を研究してきました。その結果、消費税の転嫁は、景気の状況によって左右されることが多いことが分かりました。これは海外の国々でも同じ現象です。このような事実を解明し、国際財政学会などを通して各国の研究者と意見交換することで、将来のより良い税制作りに貢献していきたいと考えています。
消費税の転嫁問題について研究しています。日本では、消費税は簡単な税金と思われがちなことに加え、税金の「使われ方」に注目が集まりがちです。そのため、税金の「集め方」や「経済への影響」を研究する分野はあまり注目されていません。しかし、ヨーロッパではこの分野の研究が盛んです。
現在、日本の消費税率は10%と法律で定められていますが、長引く経済低迷のなか、企業は本当に消費税の上乗せに成功しているのでしょうか? また、高い消費税率が消費者に悪い影響を与えてはいないでしょうか?
私は、さまざまなデータを使って消費税が経済に与える影響を研究してきました。その結果、消費税の転嫁は、景気の状況によって左右されることが多いことが分かりました。これは海外の国々でも同じ現象です。このような事実を解明し、国際財政学会などを通して各国の研究者と意見交換することで、将来のより良い税制作りに貢献していきたいと考えています。
論文執筆を通して「something new」を発見
「努力」と「危機感」を持って学びを深める
ー大学院での講義や論文指導の際、特に意識されていることについてお話しください。
大学院では、専門知識を深く学ぶことが最も重要です。大学教授である私たちは、長年の研究活動を通して常に最先端の知識を吸収してきました。これらを講義等で惜しみなく学生に伝え、学術知識をしっかりと身につけてもらうことを重視しています。
論文指導の際は、学生が興味のある分野を見つけてきたらそれについて何度も対話し研究テーマに仕立てていきます。そのテーマについて、経済学的な視点や基準体系で分析・考察できるようになるまで丁寧にサポートします。
修士課程では、学生が将来どのような仕事に就いても科学的な視点でテーマを深く探求できる基礎力を養います。論文作成を通して問題意識の設定、先行研究の調査、仮説の検証、結論の導出といった一連のプロセスのなかで専門人材になるための基礎力を育成しています。
博士課程の学生には、とにかく早く学位を取得することを重視し指導しています。日本ではかつて、博士号は「人生の集大成」と考えられていました。しかし現在は「研究者としての入り口の資格」と位置づけられ、早期に博士号を取得し研究者としてのキャリアを早くスタートさせることが推奨されています。
博士過程に入学すると、「自分が特別な存在になった」と勘違いする学生が一部いますが、世界は広く、自分より優れた研究者がたくさん存在することを自覚してほしいですね。学術論文の競争相手は、その道数十年を誇るキャリア教授たちです。論文執筆を通して「something new」を発見できるよう、要所要所でアドバイスを行い研究力の底上げをサポートしています。
大学院では、専門知識を深く学ぶことが最も重要です。大学教授である私たちは、長年の研究活動を通して常に最先端の知識を吸収してきました。これらを講義等で惜しみなく学生に伝え、学術知識をしっかりと身につけてもらうことを重視しています。
論文指導の際は、学生が興味のある分野を見つけてきたらそれについて何度も対話し研究テーマに仕立てていきます。そのテーマについて、経済学的な視点や基準体系で分析・考察できるようになるまで丁寧にサポートします。
修士課程では、学生が将来どのような仕事に就いても科学的な視点でテーマを深く探求できる基礎力を養います。論文作成を通して問題意識の設定、先行研究の調査、仮説の検証、結論の導出といった一連のプロセスのなかで専門人材になるための基礎力を育成しています。
博士課程の学生には、とにかく早く学位を取得することを重視し指導しています。日本ではかつて、博士号は「人生の集大成」と考えられていました。しかし現在は「研究者としての入り口の資格」と位置づけられ、早期に博士号を取得し研究者としてのキャリアを早くスタートさせることが推奨されています。
博士過程に入学すると、「自分が特別な存在になった」と勘違いする学生が一部いますが、世界は広く、自分より優れた研究者がたくさん存在することを自覚してほしいですね。学術論文の競争相手は、その道数十年を誇るキャリア教授たちです。論文執筆を通して「something new」を発見できるよう、要所要所でアドバイスを行い研究力の底上げをサポートしています。
ー研究室で学ぶにあたって求められる資質とは、どんなことでしょうか。また、どのような学生を育成していきたいとお考えでしょうか。
大切なのは「努力」と「危機感」です。大学院に入学し、24~5歳にもなれば、誰でも自ら学ぶことができるようになります。若い頃勉強が苦手でも、地道に努力を重ねれば、必ず道は開けます。また、特に博士課程では、周りの社会人と比較して自分がどれほど恵まれた環境にいるかを自覚し、常に危機感を抱いて勉学に励む姿勢を持ち続けることも大切だと思います。
アメリカの企業は、大学に対して「問題解決能力ではなく、問題発見能力を育成してほしい」と要望しています。まだ誰も気づいていない重要な問題を見つけることは難しいですが、将来専門家として活躍する皆さんには、「問題を発見できる人」になってほしいと考えています。そのためには、とにかくたくさんの書物を読むこと。良い情報とそうでない情報を取捨選択し、それら一つひとつにどのような意味があるのか深く考える訓練を続けていくことが、問題発見能力につながるのではないでしょうか。
大切なのは「努力」と「危機感」です。大学院に入学し、24~5歳にもなれば、誰でも自ら学ぶことができるようになります。若い頃勉強が苦手でも、地道に努力を重ねれば、必ず道は開けます。また、特に博士課程では、周りの社会人と比較して自分がどれほど恵まれた環境にいるかを自覚し、常に危機感を抱いて勉学に励む姿勢を持ち続けることも大切だと思います。
アメリカの企業は、大学に対して「問題解決能力ではなく、問題発見能力を育成してほしい」と要望しています。まだ誰も気づいていない重要な問題を見つけることは難しいですが、将来専門家として活躍する皆さんには、「問題を発見できる人」になってほしいと考えています。そのためには、とにかくたくさんの書物を読むこと。良い情報とそうでない情報を取捨選択し、それら一つひとつにどのような意味があるのか深く考える訓練を続けていくことが、問題発見能力につながるのではないでしょうか。
ー経済学研究科 国際経済専攻のゼミ生の特徴や、ゼミ生のこれまでの研究テーマについて教えてください。
年度により異なりますが、近年は中国からの留学生が多く在籍しています。本学には留学生指導の経験豊富な教員が揃っているため、留学生が安心して学生生活をスタートし、スムーズに学習を進めることができています。
中国からの留学生は、現代の中国の課題である税制と経済発展の関係や、格差問題などをテーマに研究を進めています。ベトナムからの留学生は、日本の外国人雇用について研究しました。一時帰国を活用してベトナムの就労斡旋機関にインタビューを行い、興味深い事実を発見しました。留学生たちは、研究を始めた当初は明確な問題意識を持っていませんが、調査を進めるうちに問題点がクリアになっていく過程に研究の醍醐味を感じています。教員として、その手助けができることを嬉しく感じています。
年度により異なりますが、近年は中国からの留学生が多く在籍しています。本学には留学生指導の経験豊富な教員が揃っているため、留学生が安心して学生生活をスタートし、スムーズに学習を進めることができています。
中国からの留学生は、現代の中国の課題である税制と経済発展の関係や、格差問題などをテーマに研究を進めています。ベトナムからの留学生は、日本の外国人雇用について研究しました。一時帰国を活用してベトナムの就労斡旋機関にインタビューを行い、興味深い事実を発見しました。留学生たちは、研究を始めた当初は明確な問題意識を持っていませんが、調査を進めるうちに問題点がクリアになっていく過程に研究の醍醐味を感じています。教員として、その手助けができることを嬉しく感じています。
税制や財政制度、社会保障制度にしっかり取り組める
ー研究内容は、将来どのように活かせるのでしょうか。
私は、経済分析の中でもデータ分析を得意としています。近年、経済学や政治学の分野で「因果推論」というデータ分析手法が注目されています。これは、従来の方法では分からなかった「原因と結果の関係」を明確にする画期的なものです。例えば、薬の効果を調べる場合、薬を飲んだ人と飲まなかった人を比較することで薬の効果を判断できます。経済学においても、消費税増税の影響を調べるために、食料品など増税対象外のものと比較することで、増税の影響を正確に把握できます。
因果推論は、データから原因と結果の関係を明確にできるため日々新しい発見が続いており、政策現場でも即座に活用されています。因果推論にもとづく実証分析は、将来どんな仕事をする上でも必ず役に立つでしょう。
私は、経済分析の中でもデータ分析を得意としています。近年、経済学や政治学の分野で「因果推論」というデータ分析手法が注目されています。これは、従来の方法では分からなかった「原因と結果の関係」を明確にする画期的なものです。例えば、薬の効果を調べる場合、薬を飲んだ人と飲まなかった人を比較することで薬の効果を判断できます。経済学においても、消費税増税の影響を調べるために、食料品など増税対象外のものと比較することで、増税の影響を正確に把握できます。
因果推論は、データから原因と結果の関係を明確にできるため日々新しい発見が続いており、政策現場でも即座に活用されています。因果推論にもとづく実証分析は、将来どんな仕事をする上でも必ず役に立つでしょう。
ー卒院生は、社会でどのような活躍をしていますか?
多くの学生は、修士課程修了後に就職しています。日本に残った留学生は日本のシステム会社や機械メーカーに、母国に帰国した留学生は、金融機関や会計事務所に就職するケースが多いです。留学生の母国の多くでは、就職において大卒、大学院卒といった資格が非常に重視されるため、修士号、博士号を取得することは、社会人生活を送るうえで非常に有利になっています。
多くの学生は、修士課程修了後に就職しています。日本に残った留学生は日本のシステム会社や機械メーカーに、母国に帰国した留学生は、金融機関や会計事務所に就職するケースが多いです。留学生の母国の多くでは、就職において大卒、大学院卒といった資格が非常に重視されるため、修士号、博士号を取得することは、社会人生活を送るうえで非常に有利になっています。
ー入学検討者へのメッセージをお願いします。
所得税、法人税、消費税などの税が家計や企業の行動に及ぼす影響の分析、日本や諸外国における財政制度の比較、公的年金、公的医療などの仕組みと改革のあり方、世代会計など個人や家計レベルの受益と負担に関する研究に興味のある学生を歓迎します。修士課程については、初年度に論文の研究計画をじっくり練り直しますので、準備不足であっても心配ありません。
これからの時代、経済学に限らず、政治、法律などどの分野においても英語は必要不可欠であり、私の研究室では英語による論文作成を指導しています。「英語による論文作成にチャレンジしたい」という意欲のある学生も大歓迎です。
また、大学院の進学先を検討する際、インターネット上の書き込みを参考にする学生も少なくないと思いますが、フェイク情報も多分に含まれていますので、注意が必要です。入学前の質問は本学で受け付けています。留学生のみならず、学部生、社会人の方、遠慮なくお問い合わせください。
所得税、法人税、消費税などの税が家計や企業の行動に及ぼす影響の分析、日本や諸外国における財政制度の比較、公的年金、公的医療などの仕組みと改革のあり方、世代会計など個人や家計レベルの受益と負担に関する研究に興味のある学生を歓迎します。修士課程については、初年度に論文の研究計画をじっくり練り直しますので、準備不足であっても心配ありません。
これからの時代、経済学に限らず、政治、法律などどの分野においても英語は必要不可欠であり、私の研究室では英語による論文作成を指導しています。「英語による論文作成にチャレンジしたい」という意欲のある学生も大歓迎です。
また、大学院の進学先を検討する際、インターネット上の書き込みを参考にする学生も少なくないと思いますが、フェイク情報も多分に含まれていますので、注意が必要です。入学前の質問は本学で受け付けています。留学生のみならず、学部生、社会人の方、遠慮なくお問い合わせください。