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拓殖の先達に訊くvol.03


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大学院進学のきっかけと
国際経済学の学び

服部:大学の学部における国際経済学の学びの目的は、講義やゼミを通し、先達のさまざまな業績について理解を深めることです。大学院は、これらをふまえた上で、既存の概念や理論が本当に成り立つのかまずは疑うことから始め、思考をより深める訓練を重ねる場でもあります。弓田さんが本学の大学院経済学研究科に進学し、国際経済学を専攻した理由を改めて教えていただけますか。

弓田:学部生1年次にカザフスタンに初めて旅行に行きました。カザフスタンは1991年のソ連崩壊後、社会主義経済から市場経済への移行期を経て経済成長した国なのですが、それまでインターネットを通じて知り得ていたイメージがくつがえされ、「この国はすごい」と肌で感じました。カザフスタンの経済移行期になにがあったのかについて深く学び、じっくり研究したいと思い、大学院への進学を決めました。

服部:大学院では、学生一人ひとりがその人ならではの問題意識を持ち、物事を調べ、考えることを引き出すアプローチを心がけています。弓田さんは、在学時はどのような意識で講義や演習に臨みましたか。

弓田:講義の内容をすべてうのみにせず違う視点で考えたり、「これはどういうことなのだろう」と思ったことはすぐに調べたりすることを常に心がけていました。大学の図書館を利用したり、ウェブサイトを検索したり、クラスメイトと意見交換したりしながら学びを深めていました。

カザフスタンに足を運んで
付加価値を追求した修士論文

服部:その真摯な姿勢が修士論文にも現れていましたね。大学院では、院生活2年間の学びで得た成果をまとめる修士論文の執筆に多くの時間を費やします。修士論文は単に知識や情報をまとめるだけでなく、独自の視点や考えに基づいて研究し、その成果を論理的に文章化する必要があります。弓田さんの修士論文はカザフスタンの経済移行期がテーマでした。論文指導の際は“その人らしさ”がより発揮できるようサポートしていますが、現地に足を運んでフィールドワークを重ねた視点はユニークでオリジナリティにあふれ、非常にすぐれた内容でした。カザフスタンではどのようなフィールドワークを行ったのですか。

弓田:大学院2年次の秋に単身で2〜3週間ほど滞在したのですが、非常に有意義な渡航になりました。現地の友人にコーディネートしてもらい、国立大学の教授から話を聞きました。また、友人のお父さんが政治家で、その方からのご紹介でさまざまな方々とお会いできたことも非常に幸運でした。オリジナリティを追求するためには、現地に足を運んで調査することが大切であることを実感したと同時に、渡航を通し自分の強みも発見できたと思います。きっかけとなった「論文に新たな付加価値を加えるためにも、現地に行ってみたらどうですか」という服部先生のアドバイスには、心から感謝しています。

弓田さん

服部:毎週の論文指導では弓田さんにさまざまなアドバイスを施しましたが、弓田さんは私の助言を素直に受け止め、吸収し、論文の精度を着実に高めていきました。社会で生きていく上で、周囲の人々の助けを借りながら成長していくことは非常に大切です。弓田さんのように素直にアドバイスを受け入れる姿勢はさらなる飛躍の糧となりますし、ご自身の大きな魅力の一つだと思います。

弓田:ありがとうございます。先生は、一つひとつのコンテンツに非常に細部までご指摘をくださいました。「この部分をもう少し深掘りするとよいと思います」「この部分のエビデンスを掘り下げてみましょう」などの言葉は、私の研究をより深く、精密なものへと導いてくれました。先生の指導を通し、自主的に文献を調査する力、論理的に思考する力を養うことができたと思っています。

就職活動は大学院での学びを生かし
海外でも活躍できる企業に

服部:弓田さんは2023年3月に大学院を卒業し、4月から株式会社TMEICに入社したそうですね。現在はどのような業務を行っているのですか。

弓田:広島市の支店に配属され、広島県周辺を中心に国内のお客様への営業活動を行っています。さらに、弊社のアメリカ現地法人のスタッフとチームになり、アメリカのエンドユーザー向けの営業活動も行っています。アメリカ現地法人スタッフとの会議はオンラインで、時差もあるため夜かなり遅い時間になってしまうのですが、皆で力を合わせてプロジェクトを進めていくことにやりがいを感じていますし、毎日がとても充実しています。

服部: 就職活動はどのように行ったのですか。

弓田:大学院で学んだことが生かせるよう、海外でも活躍できる会社を中心に、就活アプリを利用しながら就職活動を行いました。実は、今の会社が決まる前に他社から内定をいただいており、入社予定だったのですが、ある日地下鉄の車内で今の会社の広告をたまたま目にし、「自分の理想に一番マッチするのはまさにここだ!」と自分の中でピンとくるものがあったんです。それで、いても立ってもいられずその場で携帯から応募案内にアクセスし、最終的には今の会社に就職することができました。

服部: 弓田さんの強い想いが、より希望に近い就職先を引き寄せたのかもしれませんね。
ところで、経済学研究科では多くの留学生が学んでいます。しかし、外国籍の学生にとって、日本での就職活動は容易ではありません。そんな中、弓田さんは積極的に他の留学生の就職活動をサポートしてくれましたよね。

弓田:はい。同じ就活生目線で、エントリーシートの内容を見て気づいたことをフィードバックしたり、筆記試験のための勉強を手伝ったりしました。外国籍の大学院の友人も無事に志望する企業に内定が決まって本当に良かったです。

大学院での学びが
グローバル社会で活躍に直結

服部:日本では、企業によっては「大学院卒」というキャリアが十分に評価されていない傾向が見受けられます。弓田さんはこの点について、就職活動を通じてどのように感じましたか。

弓田:私自身は、大学院の卒業資格を取得して本当に良かったと思っています。就職活動では、修士論文について深く説明できることが強みになりましたし、面接官にも納得していただけたと思います。また、海外の人と仕事をする際も、修士号を持っていることが信用度に大きく影響することから、学部卒よりも仕事が広がりやすいと感じています。学部時代、ゼミの先生からも「海外で働きたいなら修士号を取った方が良い」とアドバイスを受けていました。その言葉通り、修士号を持っていることで就職活動しやすかったと感じています。改めて、先生方のご指導に感謝しています。

服部:なるほど。私が大学院にいた頃と比べると日本経済全体のプレゼンスは下がってきていますが、今はこの低迷がむしろ「大学院進学」にプラスに働いていると。社会で生き抜いていくためには、日本の社会だけで通用する論理ではなくグローバルな価値観や評価軸が重要になってきている。そのような中で活躍しようと思う人にとっては、大学院がグローバル社会で活躍するために必要な知識やスキルを身につける場として機能しているということですね。

弓田:おっしゃる通りだと思います。大学院に入り、多様な専門科目や研究を通して自分の興味や適性を探究することができました。大学院には、何か疑問があったらそれを狭く深く掘りさげる時間があります。それもかなり自由に自分の感覚でアプローチさせてもらえるので、自分自身を成長させるための貴重な機会になったと思います。

服部教授と弓田さん

服部:本学の経済学研究科は国際経済専攻ということで、一般的な経済学研究科にある科目に加え、国際経済学、国際金融、国際貿易など国際系の科目、さらに「東南アジア経済論」など地域研究の科目を受講できるという大きな特徴があり、政治学の教員からも学ぶことができるのも強みです。社会人になった弓田さんは、大学院での学びがどのように役立っていると感じますか。

弓田:専門的なことでいうと、為替ですね。海外と仕事をしていると、為替で利益が変わってきます。今は円安なので海外からの受注がかなり多いこともあり、しっかり為替の勉強をしていて良かったと思います。広い意味では、繰り返しになりますが調べる力やひとつの情報に対して深掘りしていく力を蓄える訓練をさせてもらったので、情報収集能力やそれらを発展させる力が仕事につながっていると思います。「学部を卒業して何をしていいか分からない」「進路が定まらない」という人は、大学院に入って、学問に対する多角的なアプローチにチャレンジしてみることをおすすめしたいですね。