大学院生 Interview

複眼的な視座で台湾研究を深めていき
幅広い分野での「国際人」育成に尽力します

社会人になってから大学院へ進学した理由はなんですか?

大学時代は「放送ジャーナリズム」と「テレビラジオ放送技術」を専攻し、メディアについて学んできました。卒業して新聞記者となり、経済部と外信部を経験しました。その間、シンガポール国立大学への留学を経て、台北、上海の両支局で特派員として中国全土や東アジア各地を飛び回ってきました。通算で15年に及んだ海外駐在で国際報道の最前線に身を置けたことは、人生で最も貴重な経験でした。ただ、形而下の取材現場で、情報の「フロー(流れ)」を追い求めるジャーナリズムの世界は、必ずしも歴史的経緯や事象の全体像までは見えてきません。同時に「知のストック(蓄積)」とも言えるアカデミックな形而上のアプローチが必要なのではないかと長年、感じていました。いわば「ジャーナリズムとアカデミズム」という車の両輪のような、複眼的な視座で東アジア理解を深めるべきだとの思いが募り、大学院で学ぶことを決めました。

拓殖大学大学院を選んだ理由はなんですか?

拓殖大学大学院には、渡辺利夫元学長総長から「アジア塾」などでご指導を受けてきたご縁があり、ライフワークである台湾研究を進めるにあたり、伝統的に台湾と関係の深い拓殖大学で学ぶことに意義を感じました。また、現在の指導教官である丹羽文生教授をはじめとした講師陣の重厚さとともに、学生に他国の外交官がいるなど国際性豊かな雰囲気にも魅力を感じました。

どんな研究を自身のテーマに取り上げていますか?

現在進める研究テーマは、「台湾海峡危機における李登輝政権の対中政策」です。戦後の台湾を支配した「中華民国体制」の中にあって、強権主義を民主主義にシフトさせた李登輝政権が、「中華人民共和国」からの武力威嚇で一触即発となった当時、いかに軍事衝突を未然に防いだのか。いまだ解明されていない政策決定プロセスなど、知られざる「史実」を掘り起こす狙いがあります。
台湾は世界でも特殊な唯一無二の地域といえるもので、極めて特殊な研究領域であり、私自身これまで注力して研究してきたものです。日本は台湾のことを真摯に考えていく歴史的経緯があるにも関わらず、日本人がそれほど意識していないということにも憂いを感じてきました。また現在、安全保障上の、地政学的な重要性を有するのが台湾でもあるのです。

大学院の学びをどのように今後のキャリアへ繋げますか?

私は2021年9月、他大学で中国政治や中台関係、東アジア文化などについて教鞭をとる機会を与えられ、現在も続けています。本学でのアカデミックな研究手法や論文執筆の成果を自らの研究の深化に結び付け、教育の世界にも幅広く応用したいと考えています。ジャーナリズムやアカデミックな世界、ビジネスなど実業の世界や国際貢献のための公的業務など、幅広い分野で「国際人」を育成するために力を尽くすつもりです。