Graduate School of Local Government 地方政治行政研究科

指導教員  地方政治行政研究科「地方自治における地方議会と住民の役割」
眞鍋貞樹教授
地方政治における地方議会と住民との関係性について研究。その領域は地方議会制度、地域福祉、地域環境、まちづくり、犯罪といった広範な分野に及ぶ。さらには「地域という概念は国境を越える」という立場から、アジア諸国の社会の諸問題にまで関心を広げている。

大学院生 地方政治行政専攻修士課程2年
大学のゼミの課外活動で、高齢者の万引きの未然防止活動に取り組んだ経験から、高齢者の犯罪の防止、なかでも常習的な高齢者の再犯防止の問題に感心を持ち、大学院に進学。卒業後の進路として検察事務官を目指しており、さらに法務省で高齢者犯罪に関する政策立案に関わることを希望している。

高齢者の犯罪が増えている…。
「なぜ?という疑問か「防ぐ政策の立案へ。

学部生の時に取り組んだボランティア活動で、スーパーの万引きを1/2に減少させた経験を持つ松橋遼明さん。大学院では、高齢者の犯罪、そして再犯を防止する政策をテーマに研究しています。指導に当たるのは、政治と社会との関係性について研究する眞鍋貞樹教授。松橋さんが取り組む研究の内容と、大学院卒業後の進路などについてお話しいただきました。

スーパーの万引きを1/2に減少させた「買い物コンシェルジュ」。

ーー松橋さんがいまの研究を始めるきっかけとなったのは、学部生の時に取り組んだ「買い物コンシェルジュ」という活動だったそうですね。

松橋はい。拓殖大学の政経学部で犯罪学と刑事政策を研究する守山先生のゼミでのことです。課外活動にも熱心なゼミでしたので、地域のスーパーで増えている高齢者の万引きを防止する取り組みをボランティアでやろうということになりました。

眞鍋「コンシェルジュ」というネーミングがユニークだね。あなたが考えたの?

松橋ネーミングを考えたのは女子学生です。僕はゼミのリーダーをしていました。お年寄りの万引きを減らすにはどうしたらいいかをみんなで考えて、「買い物をサポートする」というスタイルでこちらから「声かけ」を行おうという結論になりました。

眞鍋犯罪学では「顔を見られる」ことが犯罪の抑止に結びつくという学説があるね。それを実行したわけだ。

松橋はい。『防犯』というと監視をすると思われがちですが、お年寄りのサポート をするボランティア活動というスタイルが、お客様に不快な思いをさせ ることなく、防犯に繋がり成功したのだと思います。

ーー実施期間はどれくらいでしたか?

松橋2か月間でした。その結果として期間中の万引き件数を約1/2に減らすことに成功しました。

眞鍋素晴らしい成果だね。

松橋はい。この活動は警察からも高い評価をいただき、「警視庁生活安全部長賞」という思わぬご褒美もいただきました。

眞鍋でも2か月だからできたという面もあるね。学生とはいえ、ボランティアでそうした活動を続けるとなると難しいよね。社会問題に取り組む上で、「続ける」ということが常に問題になるんだ。

松橋そうですね。たとえば1年間ずっと活動を続けるといったことは難しかったと思います。その経験から、国の政策として高齢者の犯罪の問題をどう解決していくか、という問題意識が生まれ、大学院への進学を決めました。

高齢者の犯罪と深く関わる孤独。その解決策を政策学の視点から考える。

ーーではいま取り組んでいる研究について教えてください。

松橋現在、日本の一般刑法犯の検挙者のうち、再犯者が占める比率が 約半分です。更に刑務所出所後、5年以内に約4割が再入所するという 現実があります。高齢者の犯罪が社会問題化していますがるなかでも、 特に処罰を受けても再び犯罪を犯してしまう高齢者が増えている点に 注目しました。

眞鍋検挙者の約半数が再犯者で、特に近年急増しているのが多くの高 齢者というのは、初めて聞くとびっくりしてしまう話だよね。

松橋高齢者の犯罪について、保護観察官や保護司の方からお話を聞いたり、多くの先行研究にあたったりして考えているのですが、その要因として、経済的困窮や「窃盗症」という病気、あるいは孤独などがあげられています。私としてはやはり「高齢者の孤独」というところに、高齢者犯罪が増えている大きな要因があるように思えます。

眞鍋高齢者の孤独という問題は、家族や地域の問題なども含まれて、そう簡単に解決できるものではないね。

松橋はい。将来は、高齢者の孤独の問題について、地域で防犯活動に取り組んでいるNPOの方々からも、お話をうかがいたいと考えていますが、まず大学院では、様々な要因で犯罪を犯しそうになる、あるいは再犯者になりそうになる高齢者の犯罪をくいとめることが政策としてできないか、というところに絞って研究をしているんです。

眞鍋私の研究の特長は、社会的な問題の傾向や要因を分析するだけでなく、「どんな対策を考え」「どう実行するか」というプロセスまでを追究する点にあります。これまで大きく扱われることの少なかったテーマ、たとえば「失踪」や「自殺」なども学問的に取り上げ、研究してきました。高齢者の犯罪や再犯というテーマにも大いに興味がありますよ。

松橋私が政策学を専門とする眞鍋先生のもとで学ぼうと思ったのも、そうした研究姿勢に惹かれたからなんです。実際に指導を受けてみて、多様な社会問題に関する具体的な政策の実例について教えていただくことが多く、とても勉強になります。

検察事務官としての経験を積み、政策立案の仕事に。

ーー松橋さんは大学院を卒業後、公務員を目指しているそうですね。

松橋はい。私は検察事務官を目指しています。容疑者と向き合う現場で経験を積んでから、法務省で高齢者の再犯を防止する政策の立案に携わりたいと考えているんです。まもなく公務員試験があり、修士論文作成の傍ら、受験勉強にも力を入れています。

眞鍋有効な政策を考えるには、現場を知ることが大切だね。検察事務官という仕事では、検察官の容疑者への取り調べに立ち会うケースもあるでしょう。政策を考える立場を目指す上で、犯罪を犯した人がどういう生活を送ってきたか、それぞれがどんな性格の人なのかといったことを知ることは重要だと思います。

松橋再犯者が増えている一方で、最近特に65歳以上の初犯者も増えてきています。いわゆる「犯罪者」のイメージとは遠いお年寄りが、ある日突然に罪を犯してしまうということが私にはよく理解できないのです。ですから高齢者犯罪の実際をこの目で見て深く理解したいと思っています。

眞鍋松橋さんは法律に関する知識も豊富だし、検察事務官としてしっかり仕事ができると思います。そこから政策立案に進むという志も立派で、ぜひ実現して欲しいですね。

松橋はい。ありがとうございます。

大学院での研究成果をふまえて司法の現場へ。
さらなるステップで政策立案の仕事に関わるために。