Graduate School of Engineering 工学研究科 情報・デザイン工学専攻

指導教員 工学研究科「人の認知や統計的評価を用いた景観デザインの研究」
永見 豊准教授
建設コンサルタントとして橋や道路などの公共施設の計画・設計に携わった後、拓殖大学へ。主な研究テーマは「橋梁デザインにおける機能性・経済性・景観性に関する研究」「道路走行空間におけるシークエンス景観に関する研究」「住民参加型まちづくり計画」など。


大学院生 情報・デザイン工学専攻博士前期課程2年
高校でデザインを学び、拓殖大学工学部デザイン学科に進学。学部ではアニメーション広告の制作などに挑戦した。将来は高等学校教員をめざしており、専修免許状を取得するために大学院へ。現在は母校の高校で非常勤講師としてデザインの授業を担当しながら大学院に通っている。

「高速道路の逆走という課題に対して、
デザインの視点から解決策を提案する。

「パーキングエリアの逆走対策」をテーマに研究する鈴木 晴子さん。橋や道路などの公共施設の計画・設計の専門家である永見 豊准教授のもと、高速道路を管理運営する会社との共同研究などを通して、道路が抱える問題の解決に挑戦しています。シミュレーションから実際の施工まで、実践的な課題に取り組むお二人に、研究の魅力や今後の展開についてお伺いしました。

企業との共同研究で、高速道路の逆走対策を考える。

ーーまずは鈴木さんの研究内容について教えてください。

鈴木私の研究テーマは「パーキングエリアの逆走対策」で、路面標示による視覚的な対策で逆走を防ぐ方法を模索しています。近年、全国各地の高速道路で車の逆走による事故が相次いでいます。私の研究はこうした課題にデザインの視点から解決策を提案するものです。

永見逆走の原因は過失や故意もありますが、「うっかり、ぼんやり」していて誤って進入したことを認識していない場合が多く、逆走の7割が65歳以上の高齢者です。認知機能の低下が原因の一つとされており、カーナビなどにより音声で直接警告できればかなり有効ですが、精度の向上と装置の普及にはまだ時間がかかりそうです。そのため、視覚的に注意を喚起する対策が欠かせないものになっています。私の研究室ではNEXCO東日本や阪神高速道路など高速道路を管理運営する会社と共同研究を実施しており、鈴木さんもプロジェクトに参加して、路面標示に関する研究をしています。

ーーどのような手法で研究されているのですか?

鈴木まずは現状の課題を抽出し、先行研究を調べながら問題解決につながる路面標示のデザインを考えています。私の場合なら「逆走」という問題を解決するために矢印などの路面標示を3Dで設計し、それを研究室にあるドライブシミュレーターで検証しています。

永見優れた研究成果は実用段階へと進み、私の研究室からは実際の高速道路の路面標示に採用されたデザインも生まれています。

研究の基本はトライアンドエラー。キャンパスでの実証実績も。

ーー研究分野の魅力を教えていただけますか?

鈴木机上で考えるだけでなく、実際に施工まで着手できるところです。

永見実際の道路に施工されるような大きなプロジェクトだけでなく、路面標示に使えそうなアイデアがあれば、八王子国際キャンパス内の路上に施工させてもらっているものもあります。

鈴木これまでに立体的に見える矢印や横断歩道や、遠くから見てもわかりやすい「とまれ」の路面標示などを作りました。実際に施工してみると、例えば塗料が光って見えにくい、塗装が剥がれやすいなど、ドライブシミュレーターだけでは気づかないような課題も見えてきたのでたいへん有意義な経験でした。

ーー今後はどのような展開を考えていますか?

鈴木逆走した時により強く警告を与えるために、空間そのものに違和感や危機感を抱くようなデザインを考えています。矢印などの標識だけではなく、例えば逆走したら空間全体が赤く見えるような工夫を施していきたいと考えています。

永見シミュレーションを用いた研究の基本はトライアンドエラーです。アイデアを試作して、改善点を見つけ、作り直すというプロセスで研究を進めることでデザインの完成度を高めていきます。鈴木さんは行動を起こすのが早いので、次々と新しいアイデアを生み出してくれることを期待しています。

鈴木ありがとうございます。先生の指導や外部との連携を通じて、自分では気づかないような発見があるので、ますます洗練されていく研究にやりがいを感じています。

専修免許状を取得して、デザインの魅力を伝えられる教員へ。

ーー鈴木さんは将来どのような進路を目指していますか?

鈴木大学院修了後は研究者ではなく、教育者の道に進もうと考えています。私が大学院に進学した最も大きな理由の一つが、修士の学位を取得すると、高等学校教諭の専修免許状を取得することができるからです。現在は母校の高校で非常勤講師として勤務しており、大学院修了後は専修免許状を活かして正規教員になりたいと考えています。

ーー生徒にどんなことを伝えていきたいと考えていますか?

鈴木私が拓殖大学の学部と大学院で学んだのは、ものづくりの面白さと奥深さ。表面上のかっこよさを考えるだけでなく、使う人、使われる場面などを考えて、人の役に立つデザインを考える醍醐味を学びました。それを生徒たちに伝えられるような先生になりたいですね。

永見工学研究科で研究するのは、まさに鈴木さんが言った通り、ユーザーを中心に据えて考えるデザインです。鈴木さんのように危険を予防するためのデザインもあれば、デザインによって円滑なコミュニケーションを可能にしたり、より快適な暮らしを実現したり、さまざまなソリューションが可能になります。鈴木さんには生徒たちにそういうデザインの可能性を伝えていってほしいですね。

鈴木がんばります。使う人が喜ぶ姿を見ると自分もうれしくなる…そんな心をもった未来のデザイナーを高校の教育現場で育成できたらと思っています。

ーーありがとうございました。

デザインが使われる場面や社会にあるニーズに思いを巡らせ、
新しい視点から問題解決ができるデザイナーを育成したい。