Graduate School of Economics 経済学研究科

大学院生 国際経済学専攻博士前期課程1年
大学で応用数学を学んだ後に来日。日本語学校、そして国際貿易の専門学校を経て拓殖大学大学院へ。研究の成果を活かして、日本の金融機関で高齢者向けの金融サービスの開発に携わるのが目標。博士後期課程への進学も念頭に研究に専念している。

指導教員   経済学研究科「マクロ経済学」
白石 浩介教授
マクロ経済学、財政学が専門分野。「デフレ経済における物価の粘着性」について研究している。大学院の学生の修士論文作成に向けて、常に全力でサポートすることがモットー。留学生に対しては、まずは日本語で書かれた論文をしっかりと読み込むことから指導している。

中国の人口構造の経済成長への影響を考察する。

日本経済への関心から経済学研究を志し、拓殖大学大学院に入学した楊さん。やがて関心は母国の経済問題に移り、現在は中国社会の高齢化と経済成長の関連性について研究しています。その指導に当たるのが、日本を代表するシンクタンクのひとつで研究員を務めた経験があり、マクロ経済学の手法で日本の経済政策や財政を分析している白石浩介教授。楊さんにとって最適の指導者といえる白石教授に同席いただき、楊さんの研究や将来の希望についてお話しいただきました。

日本と同様に高齢化が進む中国。
経済の動向と人口構造の関連性を探る。

ーー楊さんは中国の大学で数学を学んだそうですね。

はい。安徽省というところにある大学で応用数学を学び、それから日本に来ました。

白石楊さんのように数学から経済学へと転じるケースは日本では少ないのですが、アメリカなどではよくあります。特にマクロ経済学の研究では数式を使った分析が重要ですから、数学が得意な人は有利です。そういった意味でも、楊さんの研究に注目しています。

ありがとうございます。日本に来て日本語学校に通っている時に、日本経済に関する本を読んだことから経済に興味を持ちました。そこで国際貿易の専門学校に進んだのですが、やはり本格的に経済学を学びたいと思い、拓殖大学の大学院に入学しました。

ーー大学院では中国経済についてについて研究しているのですね。

はい。中国の東北地方である遼寧省・吉林省・黒竜江省は、かつては重工業で栄えた地域ですが、若者が北京や上海に流出し、高齢化がより一層進んでいます。私はこの地域に焦点を当てて研究し、そこから中国全体の経済停滞のメカニズムを解明できたらと考えているんです。

白石すごい勢いで成長してきた中国の経済成長が近年鈍化してきています。楊さんはその原因が人口構造にあるのではないかという仮説を立てたわけだね?

そうなんです。東北地方は高齢化が深刻で経済の停滞も他の地域に比べて著しいものがあります。その東北地域の分析結果を、中国全体の社会と経済の問題に展開することができたらと考えているんです。

白石なるほど。経済成長には、産業構造の変化や国際貿易の影響など、様々な要因がからんでいます。また、人口構造と経済状況の関連性を考える時にも、「社会が高齢化したために経済が悪化した」と見ることもできるし、「経済状況が悪化したために若者が流出し、高齢化が進んだ」と言えないこともない。それをデータと経済理論できっちりと立証するのが大学院での研究です。

先行研究の読み込みを土台にした、精緻なデータ分析が求められる。

ーーいま研究はどのように進んでいますか?

経済成長の要因に関する研究、そして人口問題に関する研究など、私が取り組むテーマに関する先行研究がたくさんあります。白石先生から、それらの論文を徹底的に読むことの重要性を教わりました。ですから現在は、日本語や英語で書かれた論文を読み込んで、その内容を発表することが授業の中心です。

白石博士前期課程の1年生は大学院での研究を始めたばかり。1年生の秋ぐらいまでは論文を読むことに集中し、自分の研究の基礎を固めて欲しいと思っています。

拓殖大学の図書館から研究論文のデータベースにアクセスし、必要な論文を見つけてダウンロードし、プリントアウトしています。

白石研究者には、研究に役立つ論文や資料を「探す力」が大切なんです。もしデータベースで見つからなくてもあきらめずに、図書館の担当者に相談し、他の大学や研究機関から取り寄せてもらえます。それも大学の図書館の重要な機能なんです。
私の役割は大学院生がそうしたステップをしっかり踏んでいるか、研究者としてのスキルをしっかりと身につけているかを授業でチェックしながら、研究のノウハウを伝えていくことだと考えています。

そして先行研究の調査に続いては、中国の人口構造や経済状況に関して、計量経済学の手法を利用して高度な分析をしていくことになります。

白石データの分析では、複雑に絡み合った要因から不要なものを取り除いて、人口構造の変化が経済成長率に関係しているという仮説を立証しなければなりませんね。たとえば先ほど話に出た、「若者の流出と高齢化」の問題ですが、中国の1つの省には何千万人もの人口があります。そこで若者の一部が都市部に移動したからといって人口構造が大きく変わるわけではない。また、「老人が増えたら経済成長が鈍化する」と直感的には思えますが、高齢者が増えたからといって産業の生産性には直接影響はないはずです。
そのあたりのデータを細かく見て、そこにはたらいているメカニズムを解明すること、それが楊さんの研究の目標でしょう。

学生2名という少人数で中身の濃い議論が繰り返される授業。

ーー楊さんが学んでいる白石先生のゼミについて教えてください。

白石私が担当する博士前期課程1年生のゼミは学生が2名。楊さんともう1人はベトナム人の留学生です。

先生を含めて3人の授業で、毎回中身の濃い授業をしていただいています。

白石少人数で授業を行うのが本学の大学院の特色で、また留学生が多いのも拓殖大学ならではです。

ベトナム人留学生の研究テーマは「人的資本」ですね。

白石彼は人的資本の中でも労働者のスキルが向上すると経済成長率が高まるという仮説を立てています。楊さんは人口構造に着目していますが、2人とも経済に「人間」が与える影響を考えています。とても面白いと思いました。

人間、という点について言えば、日本に来てみて、街にお年寄りの姿が多いのに驚きました。高齢化において先行する日本社会の姿を見て、この分野について研究しようと考えたという面もあります。

白石留学生らしい視点ですね。

中国と日本では老後の過ごし方も違います。日本は会社を定年退職してからも、何らかの形で職を見つけて働く人が多いですね。中国では退職したら家にいます(笑)。

白石楊さんは大学院を卒業したら、日本の金融機関で高齢者向けのサービスを開発したいとか…。

そうなんです。大学院で学んだことを、仕事でも役立てられたらと思っています。日本と中国という2つの高齢化社会の姿を見ながらそれぞれの特色などを理解し、日本の社会に合った金融サービスを考えられたらと思っています。

白石大学院で学ぶ留学生には、日本での就職を希望する人が多いですね。もっとも、中国の学生はかっての政策の結果「一人っ子」が大半ですから、親が「帰って来い!」となるケースも多い(笑)。

私も一人っ子ですが、博士後期課程への進学も含めて、将来の計画を見据えながら研究を進めていくつもりです。白石先生にはていねいで厳しい指導をいただき、本当に感謝しています。これからも先生のもとで研究を続け、中国社会の高齢化と経済成長の関係についての結論を出したいと思っています。どうぞよろしくお願いします。

高齢化先進国・日本で、中国の高齢化問題を考察する。
その研究成果はやがて、自身の進路へとつながっていく。