Graduate School of Commerce 商学研究科

指導教員 商学研究科「租税法の諸問題」阿部 雪子教授

研究分野は、租税法、国際課税。私が担当する租税法は、独立した法分野であるが、憲法をはじめ行政法、民法、会社法などの他の法分野とも密接に関連しているためこれらの隣接分野の研究も重要である。租税法に関する法律の知識や解釈が必要となるので、判例研究等にも力を入れ、法的分析力、思考力が養えるよう指導を行っている。現在、公認会計士試験委員(租税法)を務めている。

大学院生 商学専攻 博士前期課程2年

東京工業高等専門学校を卒業後、拓殖大学商学部に入学。小学生の頃から得意だった計算スキルを活かせる分野として税理士を志す。学部の時にゼミを通じて指導を受けた阿部教授のもとで大学院でも租税法を研究することを志望し、大学院に進学する。現在、税理士試験の勉強を進めながら修士論文作成に向けて取り組んでいる。

国際的な租税回避の対策税制が研究テーマ。
税理士を目指して税法の試験勉強にも取り組む。

大学入学前から税理士を目指し、すでに簿記論、財務諸表論、消費税法の3科目に合格している小笠原朱梨さん。あと2科目合格すれば税理士国家資格を取得することができますが、大学院で単位を修得し、修了することでそれら2科目の試験免除を受けることもできます。しかし小笠原さんは、あくまでも国家試験に実力で合格したいとがんばっています。そんな小笠原さんを学部生の時から指導してきた阿部雪子教授にご同席いただき、現在の研究内容と税理士試験への取り組みについて伺いました。

大学入学前から税理士を目指す。
学部の時に税理士試験2科目に合格し、大学院へ進学。

ーー小笠原さんは税理士を目指していると伺いました。

小笠原税理士になろうと思ったのは大学入学前のことです。大学進学を折に、母から「税理士に向いているのでは」というアドバイスがあり、税理士の道を目指しました。子どもの頃から計算が得意だったこともあり理系の高専に進み学んでいたのですが、さらに税理士になるという目標ができたことで拓殖大学商学部への進学を決意しました。

阿部小笠原さんは学部時代に私のゼミで学びました。ゼミでは自らが選定したテーマについて文献を収集・整理し、研究報告を行うなど意欲的に取り組んでいました。しかも、在学中に税理士試験科目である簿記論、財務諸表論の2科目に合格しましたね。

小笠原はい。学部の時に2科目取得することができましたので、大学院生になってから税法科目の合格に向けて目標を立て、昨年、消費税法の科目に合格することができました。税理士国家試験に合格するために残りの科目として税法分野で2科目取得する必要があります。いま所得税法を勉強していて、その試験に合格したら残りの1科目は相続税法か、法人税法で受験するつもりです。

阿部本学商学研究科の租税法分野の修士課程を修了すれば、税理士科目のうち税法2科目が免除されます。でも小笠原さんは、あくまでも試験に合格して税理士になることを目標にしているのですね。

小笠原実は学部を卒業する前に、就職するか大学院に進むかで悩みました。でも学部を卒業してそのまま就職しても、本当にやりたい仕事に就けるわけではないと思うようになりました。高専の時に志した税理士への道に進もうという決意が確実になったので、大学院で学びながら税理士を目指すという進路を選んだのです。大学院における研究と両立させながら「税理士試験に合格する」という目標を立て、勉強を進めています。

阿部修士論文の執筆に向けて専門的な研究を行いながら、税理士試験勉強も地道に進めていて、たいへんな苦労もあると思いますが、現時点で、すでに3科目合格しているということで目標到達に向けてあともう一歩ですね。ここ1.2年内に成し遂げられることを願っています。

小笠原阿部先生には学部の頃からていねいな指導をしていただき、また大学院進学で悩んだ時や、進学してからも勉強のことでつまずいた時に色々とアドバイスをしていただき、本当に感謝しています。

企業の多国籍化が進むなかで生じる国際的な租税回避。
その対応策とは?

ーーでは大学院での研究テーマについて教えてください。

小笠原いま修士論文の作成に向けて取り組んでいる研究は、国際的な租税回避とその対策税制の問題です。

阿部企業のグループ化、多国籍化を背景として、国内の親会社と国外の子会社との取引が増加している。このような関連会社間の取引では、取引価格等を操作することにより所得配分を行う移転価格の問題やタックスヘイブン国に利益を移転するというBEPS(Base Erosion & Profits Shifting:「税源浸食と利益移転」)の問題が顕著になっていて、わが国をはじめOECD諸国等もBEPSプロジェクトを発足させ、新たな国際課税のルール作りに取り組み、2015年10月に「最終報告書」における対抗措置が承認され、公表されています。先進各国からも注目されている重要なテーマですね。

小笠原わが国の税法では、様々な形で租税回避を防止するための対策税制が講じられていますが、税制の抜け穴を利用した租税回避の形態が増大しています

阿部その対策税制を学問的に研究する私たちにとって国際的租税回避の問題は大きな課題です。グローバル化時代にあって企業の活動が国際規模で広がる中で、「公平な課税」が行われることは公平な競争という観点からも重要です。そのような意味で、小笠原さんの研究テーマは注目されているテーマだと思いますね。

小笠原それだけにやりがいを感じています。1年生の時に先行研究をしっかりと調べたので、いまは独自の視点で国際的な租税回避の問題にアプローチする文献を収集し分析しているところです。租税法の専門家である阿部先生の指導を受けながら、しっかりと研究を進めて行きたいと思っています。

国際的な課税問題などに取り組む拓殖大学の大学院生たち。
税理士を目指す仲間の姿に刺激を受けることも。

ーー阿部先生のゼミではどのような授業を行っていますか?

阿部私の授業では、租税法の基礎的な概念や制度を体系的に理解するために国際課税の分野を含め判例研究等により総合的に研究することを通じて、法的分析力や思考力などの養えるように指導しています。

小笠原阿部先生のゼミや授業を通じて、重要な租税判例の先行事例の研究と通じて租税法の解釈や適用問題についてじっくりと学ぶことができたと感じています。

阿部このような判例分析や研究報告により、論文の書き方や資料の参照、引用の方法等を習得し修士論文の作成へと導くことができればと思い、講義を行っています。

小笠原大学院で学ぶ人たちは最新の問題にも敏感に反応し、このような分析手法を積極的に取り入れて研究を進めていらっしゃいます。みなさん本当によく勉強していますよ。

阿部大学院商学研究科では、小笠原さんのように税理士を目指している人も多いですね。その他にも、公認会計士、国税専門官、企業財務部、法務部など多様な目標をもつ人が学んでいます。様々な院生のニーズにこたえられるように会計学、法律学、経営学、商学などの分野を基軸としてカリキュラムを設けています。社会人が働きながら学べるように昼夜開講制による講義を行っていますので、お互いに多くの刺激を受けることがあるのではないかと思っています。

小笠原私は、大学院に入学したばかりの頃に、大学院の勉強のことで悩んでいました。あの時阿部先生に励ましていただかなかったら、大学院で研究を続けることができなかったかもしれません。本当に感謝しています。今は、社会人をはじめ目標を共有するみなさんと学ぶことができ多くの刺激を受けています。

阿部大学院講義を通じて養った専門的能力・論理的な思考力は、今後、税理士の職務に役立つことを確信しています。心から応援していますよ。

小笠原阿部先生の大学院ゼミで得た知見が生かせるようこれからも地道に努力し、社会の発展に貢献できるよう努力していきたいと思います。本当にありがとうございます。

学問という深くて広い世界で、しっかりと進むべき道標を示しながら指導する「指導教授」と、その人柄や学究的な姿勢から多くのことを学びながら成長していく「教え子」の、理想的な姿を感じたインタビューでした。